壱師の花に魅せられて

神話や哲学等に思いを馳せるのが大好きです。代数学の素養アリ。適当につらつらと書いていきます。

”有理式”係数の"微分作用素"環の構成のあらましと捉え方

 f,g (g \neq 0)を変数 x_1, ... , x_n多項式とすれば、変数 x_1, ... , x_nの有理式とは式 f/g
表記できるもののことである。1だって立派な多項式であるので、 g = 1と考えれば多項式
有理式と思える。

では準備の第一段階として、非負整数の集合を \mathbf{N}_0 = \{0,1,2, ... \}複素数の係数を持つn変数の有理式全体の為す体を\mathbf{C}(x_1, ... , x_n)で表そう。

また、ステップ2として有理式a(x) := a(x_1, ... , x_n) \in \mathbf{C}(x_1, ... , x_n)に対し、  \displaystyle \partial_i a(x) = a(x) \partial_i + \frac{\partial_i a(x)}{\partial_i x_i} 微分作用素 \partial_i \mbox{ と } a(x) の掛け算を定義すると、
一般の微分作用素 \partial_1 , ... ,\partial_n多項式\mathbf{C}(x_1, ... , x_n)内の有理式の掛け算は、上の定義と結合法則、分配法則を適用して矛盾は生じない。
このことから有理式と微分作用素 \partial_1 , ... ,\partial_nで生成される環を「”有理式”係数の"微分作用素"環」と呼び R_n :=\mathbf{C}(x_1, ... , x_n) \langle \partial_1 , ... ,\partial_n \rangleと書く。
以下変数の数を明示する必要がなければ\;\;_n \; を省略する。

 

 E  \mathbf{N}_0^nの有限部分集合、\partial^\alphaを多重指数表現\partial^\alpha = \partial^{\alpha_1}\cdots\partial^{\alpha_n}とし、多重指数の大きさを|\alpha|=\alpha_1 + \cdots + \alpha_nと書く。このような記号を用いると、 R_n\mathbf{C}(x_1, ... , x_n)上の無限次元線形空間としての側面を持つことが分かる。 R_nの元は常に各 \partial_iをギュッと右に寄せた形 \displaystyle \sum_{\alpha \in E} a_\alpha(x) \partial^\alphaに書くことが出来、微分作用素和算と"有理式"倍にのみ焦点を当てた表記と見ることが出来るからだ。こうして、R_nにおいて\partial^\alphaを形式的な基底のように捉えることは考え方として有用であるので覚えておくとよい。