壱師の花に魅せられて

神話や哲学等に思いを馳せるのが大好きです。代数学の素養アリ。適当につらつらと書いていきます。

”アステカの神々と5つの太陽” その1

こんにちは、リコリスです。今日はアステカ神話のお話です。

長くなりそうなので2回ほどに分けようかと思います。

 

アステカ神話は古代アステカ王国で伝えられた多神教の神話です。またいずれお話ししますが、流浪を続けていたアステカ人が、かつてメキシコに存在した湖テスココ湖の島上にテノチティトランという都市を建設したのが始まりと言えます。彼らアステカ人はトルテカ族を始めとした他の民族の文化を取り入れ、自らの神話へと組み込んでいきました。事実、「Toltecayotl」という語が「文明」を意味するくらいには、アステカ人は他民族の文化を尊重していました。

 

そのように、アステカ人は他の文化を余す所なく取り入れていったため、アステカ神話における創世のエピソードは複雑であり、それによれば、世界はこれまでに4度神の手で作られては大災害による滅びを迎え、現在の太陽は5代目だと言われています。

これはその"5つの太陽"の物語を紐解く記事の前半にあたります。

 

はじめに、至高の創造神オメテオトルが天上界の最上層オメヨカンにて、4柱の神をもうけました。オメテオトルは男神オメテクトリと女神オメシワトルの三位一体ならぬ二神一体の名称です。神話の原初の時代から男女が、しかもくっついた状態で書かれているのってそうそうないんですよ?

生まれた4人の神の名前は、赤きテスカトリポカ(シペ・トテック)、黒きテスカトリポカ(テスカトリポカ)、ケツァルコアトルウィツィロポチトリです。この四兄弟の神が他の神々や世界の創造の根幹を担うことになっていきます。

テスカトリポカが二人?って思った方もいるでしょうが、実は全員○○色のテスカトリポカと称されているので、あまり気にしなくてもいいです。(ケツァルコアトルは白、ウィツィロポチトリは青)

 

第一の太陽を担当するのは黒き闇の神テスカトリポカです。みなさんゲームアプリなどで名前くらいはご存知でしょうが、その名が示す意味は『煙を吐く(黒曜石の)鏡』。夜や不和、支配などネガティヴなイメージから、予言、魔術や美という様々な概念との結び付きを持つ神です。

ジャガーとも関連付けられ、良くアステカの生贄儀式が関わる創作物ではこのテスカトリポカを中心に描かれることが多い気がします。

このときの太陽は「土の太陽ナウィ・オセロトル」と銘打たれています。この世界では巨人たちがドングリを主食としていましたが、テスカトリポカは宿敵ケツァルコアトルに海に蹴飛ばされてしまいます。憤慨したテスカトリポカはジャガーの群れへと姿を変え、巨人たちもろとも世界を滅ぼしてしまいます。

 

代わって、テスカトリポカをやっつけた羽毛の蛇神ケツァルコアトルが第2の太陽を担当します。この太陽の名は「風の太陽ナウィ・エヘカトル」と言います。風の神ではあるものの、後に文明を明るくした平和の神としても崇められるようになり、ギリシャ神話におけるプロメテウスよろしく人類に火をもたらした神ともいわれるようになります。

先ほどの仕返しにと、テスカトリポカはケツァルコアトルを地上へと蹴落とします。結果、地上に住む人々を強風が舐めるように襲い、あえなく世界は滅亡します。辛うじて生き残った人たちは猿になることで事なきを得たそうです。

 

第3の「雨の太陽ナウィ・キアウィトル」は雷雨の神トラロックによるものです。トラロックは大地や農耕とも縁が深く、干ばつを避けるための人身御供も頻繁に行われたと聞きます。過激な雨乞いですね。

平和の神として人身御供が許せなかったのか、はたまたテスカトリポカとのケンカがまだ続いていたのかは知りませんが、ケツァルコアトルの劫火の雨によりこの時代も終わりを告げます。不幸中の幸いに、神々は人類を鳥に変えて救ったそうです。

 

第4の太陽、「水の太陽ナウィ・アトル」を司るのは水の女神チャルチウィトリクエ。この神が司るのは既に大地に存在する水であり、トラロックのもたらす天の恵みの水とは異なります。

「ケンカはもうやめて!!世界のライフはもうゼロよ!!」と叫びたくなりますが、テスカトリポカの引き起こした大洪水でまたもや世界はエンディングを迎えます。兄弟神の総称としても語られる大いなるテスカトリポカにはチャルチウィトリクエも敵わなかったんですね。幸いにも、人類が魚として生き延びるだけの猶予はあったようです。

 

ここまで来てようやくハッとしたのか、テスカトリポカとケツァルコアトルは休戦協定を結びます。遅すぎやろww

幾度となく壊れた世界を復元すべく、二神は夢の超神タッグを組んで巨大な怪物トラルテクトリと戦います。恐らくメガトン怪獣スカイドンよりデカいんでしょうが、友情パワーに目覚めた2人には屁でもありません。テスカトリポカはこの戦いで片足を失ってしまいますが、トラルテクトリの体を引き裂いて天地創造を成し遂げます。

(マジでテリーマンみたいだな…)

 

さらに、この2人はせっかく作った天が落ちないようにと、仲良く天を支える2本の木になったと言います。「ケンカするほど…」とは言いますけど、ここまで来るともう呆れてしまいますね。

 

というわけで、テスカトリポカとケツァルコアトルによるマッスル・ブラザーズが楽しくマインクラフトしたところ(意味不)までで今回は締めたいと思います。

次は5つ目の太陽の誕生から書いていきます。それまでこの記事を何度も読んで復習しといてくだしゃんせ♬ (続)