壱師の花に魅せられて

神話や哲学等に思いを馳せるのが大好きです。代数学の素養アリ。適当につらつらと書いていきます。

『フィヨルギュン』――2人の神様は同名!?

こんにちは、リコリスです。今回から神様について語っていきたいと思います。

第一弾は北欧神話の神様『フィヨルギュン』です。北欧神話        皆さんもゲームなりアニメなりで一度は耳にしたことはあるでしょう。別名スカンディナヴィア神話とも呼ばれていて、アイスランドを含む北欧の人々の伝説や信仰が口伝や書物の形で多く残されています。ヨーロッパ中がキリスト教に染まっていく中、これらの地域は比較的最後の方まで侵攻を受けなかったため、キリスト教が普及する前の古代ゲルマン人の習俗・文化を知るうえでとても貴重で重要な資料となっています。

『フィヨルギュン』は少々特殊な神様で、同じ『フィヨルギュン』の名でも古ノルド語の男性形か女性形で示す神性が異なります。 古ノルド語は癖が強く、名詞に対して男性形、女性形、中性形の3つの性が基本的に存在するのです。

 

女性形の『フィヨルギュン(Fjörgyn)』は、雷神トールの母として言及され、一般にヨルズと同一視されています。この名は「大地」の意であり、ヨルズの名もまた大地を意味する語として認識されています。

対して、男性形の『フィヨルギュン(Fjörgynn)』はオーディンの妻フリッグの父として言及される神様です。

 

これらを受けて、学者のエリス・デビッドソンは、この2神がフレイとフレイヤのように、2人セットのdivine pairとして描かれた説を発表しています。ただ名前が似てる、というだけではないと言いたいんですね。

北欧神話は世界の始まりと終焉を筆頭に、その中に活躍する神々の戦争及び隆盛と衰退、史実上存在した(と思われる)王や英雄の誕生から死没などを色濃く描いていることから、多神教の属性を持ちながら、二元論などの概念もとても強く反映した神話となっており、実際、神々は昼と夜の運航を管理したり、太陽と月とは追っかけっこをしあう関係として描かれています。(かなりソフトで迂遠な言い回しで専門家の方はお怒りになるかもしれませんが)

 

また、『フィヨルギュン』を初期インド・ヨーロッパ人の雷雨の神々の延長とする説も存在していて、現在はヒンドゥーの雨の神パルジャニヤ、スラヴの最高神ペルーン、リトアニアの雷神ペルクーナスなどとの言語的関連性が挙げられています。ペルクーナスは鍛冶の神としての特徴も具備してたりしますが、まぁそれはいつかの機会で。

これもいつかここに記すことになろうと思いますが、アーリアン学説に見られるアーリア人の伝播と照らし合わせても、先ほど挙げた神々の分布をしっかり押さえることができます。

更にいえば、2柱の『フィヨルギュン』はそれぞれ雷神トールの母として、豊穣神フリッグの父として言及されているので、雷雨の神の延長線であるというのも頷ける話でしょう。

 え? 小難しいって?

 じゃあ、ありのまま上に書いたことを簡略化するぜ!

 「おれは伝承に基づいた大地の神様かと思ったら 雷神や鍛冶の神様の性質も併せ持っていた」

 な… 何を言ってるか分からねーと思うが 

  おれも 小説くらいのネタにしかならないと思った…

 

そーんな感じですね。でもでも。もしかしたらこの『フィヨルギュン』、結構大ボスっぽくなれるんじゃないですかね?物書きさんの手腕に期待したいところ!

これから北欧神話とかアーリアン学説に関して触れていく機会があれば、その都度説明をしていきましょう。勿論、花形のアーサー王伝説でも、少々ニッチなアステカ神話でも書きたいネタはそんじょそこらに転がってるので、途切れ途切れ続けていけたらと思います。…多分。

一人でも多くの神話的存在を語ることで、神様たちが時代の波に消えないようみんなの関心の"つかみ"になれたらと思います!(終)